
「©金沢市観光協会」
金沢の街には、いまも藩政時代の文化が色濃く受け継がれています。兼六園やひがし茶屋街などの街並みはもちろんのこと、食や工芸の分野でも加賀藩の名残が市民の生活に根付いています。
金沢の街には、いまも藩政時代の文化が色濃く受け継がれています。兼六園やひがし茶屋街などの街並みはもちろんのこと、食や工芸の分野でも加賀藩の名残が市民の生活に根付いています。
『金沢まいもん寿司』は、こうした金沢らしさを表現した店づくりで人気を博する回転寿司店です。北陸ならではの鮮度抜群のネタはもちろんのこと、店内装飾にもこだわり、朱色や金色、また友禅や九谷といった伝統文化を感じさせるしつらえを内装に取り入れています。加賀藩の美意識をいまに伝える、気品があり雅やかな趣きのある雰囲気も『金沢まいもん寿司』が人気の理由の一つです。
その『金沢まいもん寿司』で、この冬、ひときわ目を引いたのが金箔の恵方巻でした。まさに雅やかな文化の極みのような豪華な仕様は、縁起物として評判を呼び、自宅用や贈答品として人気を博しました。
萩原さん
「『金沢まいもん寿司』は、金沢発の高級回転寿司店の草分けとして知られるようになりました。私たちは、美味しくて安心して食べられるお寿司を提供することはもちろんのこと、お店を通じて金沢の文化を世界に発信していくことを目指しています。そうした中で、今回は箔一さんとコラボをして金沢の伝統文化を表現した恵方巻を提案いたしました」
限定商品として発売された「黄金まいもん恵方巻」は1本1万円と、巻き寿司としてはかなりハイエンドな価格設定となったものの、大変に好評で予約を受け付けた各店舗では早々に完売。また東京でも販売し、多くのお客様に「さすが金沢」と、驚きをもって受け止められたとのことでした。こうしたなか、鮮度と美味しさにこだわりを持つ『金沢まいもん寿司』にとって課題だったのが、自店での金箔のあしらいでした。
萩原さん
「金箔をあしらった巻き寿司を作るといっても、寿司職人に金箔の扱いに精通している人はいませんよね。箔は触っただけでも、破れてしまうほど繊細なもの。箔職人さんたちは、竹箸をつかって見事に箔を扱いますが、私たちの寿司職人にはそうした経験が不足していました」
箔をあしらう工程だけを箔職人に委託することもできるが、そうすると、店舗で作りたてをすぐに提供することができなくなってしまう。
萩原さん
「『金沢まいもん寿司』のこだわりとして、安心で新鮮なものを提供するということは譲れません。ですから、難しかったとしても、自分たちで箔をあしらうのはとても大切なことでした」
相談を受けた箔一では、今回のプロジェクトのために特別仕様の金箔を制作しました。ベースになったのは「かんたん金箔」です。これは、微弱な静電気を帯びる特殊なシートに金箔をのせて安定させる手法で、シートの部分を持つことで誰もが簡単に金箔をあしらえます。食品に触れると、食材の持つ水分に金箔が接着しスムーズに移動させることができます。工芸品の分野では「あかうつし」という手法がありますが、これを衛生的でより静電気の少ないシートを用いて食品に応用したのが、箔一オリジナルの「かんたん金箔」です。今回は、長さ18㎝の恵方巻のために、特注サイズのシートを制作しました。
取材協力
株式会社エムアンドケイ/石川県金沢市創業の飲食企業。高級回転寿司の草分けとして知られる『金沢まいもん寿司』を全国展開するほか、鮮魚料理の『魚巧庵』、とんかつ・魚かつの『金沢かつぞう』など、多彩な業態を展開している。
https://www.maimon-susi.com