新たな可能性を開いた、食用金箔の開発。
金箔を料理に使うと、ぱっと華やかな雰囲気が生まれます。私たちが1987年に初めて料理用の金箔を発売してから、大変に多くの方に使っていたけるようになりました。もともと、和食には見た目でも料理を楽しむ伝統があり、食用金箔も料理を美しく演出する素材として用いられてきました。食用金箔の可能性をさらに広げるために、新たな商品開発を考えていました。
金箔を料理に使うと、ぱっと華やかな雰囲気が生まれます。私たちが1987年に初めて料理用の金箔を発売してから、大変に多くの方に使っていたけるようになりました。もともと、和食には見た目でも料理を楽しむ伝統があり、食用金箔も料理を美しく演出する素材として用いられてきました。食用金箔の可能性をさらに広げるために、新たな商品開発を考えていました。
金箔はいつまでも色あせない輝きが魅力です。しかし料理用金箔に限っては、そうではありません。食卓に飾られた金箔は、人々が口にすれば消えていきます。金箔は、職人の手によって長い時間と手間をかけて作られたもの。だからこそ、印象深く、いつまでも心に残るものを作りたいと考えていました。
親しい人たちと美味しいものを囲んだ記憶は、大切な思い出となって残っていきます。そういった思い出をより華やかに演出する素材として金箔を広げたい、と考えていました。作りたかったのは、自由な形に切り抜くことができる金箔です。フレーク状や粉末の食用金箔はすでにあります。もし、星のかたちやハートなど、様々な形状に切り抜ける金箔があれば、さらに楽しい演出が可能になり、用途はもっと広がっていくでしょう。 しかし、これは大変に難しいチャレンジでした。金箔の薄さは1万分の1mm。おおむね、髪の毛の1/1000くらいの厚みですから、そのままで切り抜くのは不可能です。
まず思いついたのは、水溶性の食用フィルムを下地にして、金箔を補強することでした。 水溶性の食用フィルムとして身近にあるものは「オブラート」でしょう。しかし、これはうまくいきませんでした。オブラートは薄く安定したフィルムのように見えるのですが、ミクロのレベルでチェックすると、厚さにムラがあります。1万分の1mmの金箔を貼るには、ほんのちょっとの誤差でも致命傷となります。これではいけないということで、メーカー様ともいろいろ相談をしましたが、そもそもの用途が違うため厚みを厳密にコントロールすることはできませんでした。
それでもあきらめきれず、フィルム素材を探し続けていました。まだインターネットも普及していない時代。情報源は限られますが、ある日「プルラン」という素材に出会うことができました。これはトウモロコシのでんぷんを微生物が変化させてつくる特殊なものです。当時は、食品業界ですら知名度は低く、タレのとろみを付けるなど、限定的な用途で使われていました。ただ、フィルムとしては非常に安定しており、極めて薄く加工できました。さらに、当時の職人さんたちの腕はものすごく、10ミクロンの厚みのものまで作れました。これは、まさに経験のなせる技で、今ではこの水準のものは作れません。
食用フィルムはこれで行けそうだ、ということになりました。次の課題は接着です。オブラートのころに試していたのは、食用油でした。クルミ油やべに花油などには、常温で固まる性質があるので接着剤になるのです。しかし、満足いく水準のものはできません。再び、暗礁に乗り上げました。ある時、岐阜県の企業が、樹脂から作る特殊な食用糊を作っていることを知りました。当時は、医療用で、錠剤のコーティングなどとして使われているものでした。
アイデアが生まれてから、すでに数年た経っていました。このフィルムと糊の組み合わせを見つけたことで、開発は大きく前に進みました。やがて「祝」や「寿」といった漢字や、桜などの日本のモチーフをかたどった、新しい食用金箔が完成しました。当時は、これに「夢の王朝」という名前をつけて発売し、大きな反響をいただきました。いまでは、ハート型や星型に切り抜いたもの、さらにオーダーで様々なモチーフに抜いた食用金箔など、種類も増えています。料理のデザインの幅を広げるものとして、多くのシェフやパティシエの方にご愛用いただいています。
食用金箔を自由に切り抜ける技術を開発し、販売を始めた当時のパンフレットです。
当時は夢の王朝とい名前でした。現在はアニバーサリー箔として販売しています。