文化財修復
建築装飾の実績紹介

唐津くんち「曳山」|佐賀

金沢箔の伝統技術で文化財修復に貢献

佐賀県唐津市で毎年開催される「唐津くんち」は、約400年の歴史を誇る日本を代表する祭礼です。その「唐津くんちの曳山行事」は、2016年に「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録されました。
祭りを象徴する14基の豪華絢爛な曳山は、地域の人々にとってかけがえのない宝であり、修復を重ねながら今日まで受け継がれています。
箔一は2020年、水主町の13番曳山「鯱」の修復事業において金箔施工を担当し、歴史ある曳山の保存と継承に携わりました。

唐津くんち曳山「鯱」曳山行事の様子
唐津くんち曳山の修復前後の比較

文化財修復で重視した「明治9年当時の工法」

今回の修復では、単に新しく美しく仕上げるのではなく、明治9年の製作当初に近い姿へ可能な限り復元することが大きなテーマとなりました。
水主町の13番曳山「鯱」は、14基の曳山の中で唯一、輪島の職人による漆塗りが施された記録が残る曳山です。しかし、昭和の修復では工法や金箔の意匠に変更が加えられており、その後の経年により漆や金箔の傷みも見られるようになっていました。
そこで令和の修復では、町の皆様の「製作当初の姿を目指したい」という強い想いのもと、漆塗り・金箔ともに伝統的な材料と工法にこだわり、箔一が金箔施工を担当しました。

金箔で修復する箔一の職人

文化財保存を支える金箔施工技術

歴史ある曳山の修復では、一枚の金箔を貼るだけでも高度な判断が求められます。今回の修復では、文化財修復に携わる専門家による史料調査や調査結果をもとに、当時の情報に基づく施工方法の検証を行いました。
漆は乾燥に時間を要するため、一つひとつの試験結果を得るまでにも長い期間が必要となります。接着として用いる漆の塗り方、複雑な立体形状への箔の貼り方、美しい仕上がりを実現する施工条件などについて、約1年間にわたり試験と検証を重ね、本施工に臨みました。

修復前の曳山

修復精度を支える、緻密な事前調査

歴史的な曳山の修復では、施工前の調査・記録が修復の精度を大きく左右します。鯱曳山では、漆や金箔を剥離する前の段階で、箔の割付や見切り位置、意匠の配置などを一つひとつ実測し、詳細な記録を行いました。
わずかな寸法や位置の違いであっても、曳山全体の印象や意匠のバランスは大きく変わります。こうした丁寧な調査と検証の積み重ねが、歴史的価値を尊重し、製作当初の姿に可能な限り近づけるための修復を支えています。

金箔にて修復後の曳山

伝統工法を支える、繊細な施工環境の管理

金箔施工では、職人の技術だけでなく、施工環境そのものが仕上がりに大きな影響を与えます。今回の修復では、漆の乾燥に適した温度・湿度を維持するため、除湿・加湿を適宜組み合わせながら、細やかな環境管理を行いました。
巨大で複雑な形状を持つ曳山への施工に加え、限られた工期の中で、現場環境を丁寧に整えながら伝統工法による施工を実現したことも、本修復事業の大きな特徴の一つです。
目に見える金箔の美しさの裏側には、職人の技術と、それを支える緻密な環境管理があります。

唐津くんち鯱曳山と水主町のみなさま

金沢箔の技術で文化財を未来へ

文化財修復は、単に歴史的な姿を復元するだけではありません。そこに込められた地域の歴史、人々の想い、そして伝統文化を次世代へ受け継いでいくための取り組みです。
修復を終えた鯱曳山は再び唐津の町を巡り、多くの人々を魅了し、祭りの賑わいを取り戻しました。町の人々にとって曳山は、かけがえのない「宝物」です。その保存と継承に携わることができたことは、箔一にとっても大きな誇りとなりました。
 
箔一はこれからも、金沢箔の伝統技術を活かし、文化財修復や歴史的建造物の保存、建築装飾などを通じて、日本の伝統文化を未来へつないでまいります。