2019年3月14日

コラム 第11回 「女性活躍のためのアクションプラン3点」

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女性の社会進出、管理職比率の向上については、すでに総論を語る段階ではなく、具体的なアクションプランを考え、これを実行して行くことが求められています。私は以下の3点の具体的な取り組みを提案したいと思います。

 

(1)女性省

昨年私は、自民党の参議院議員の勉強会において講演を行い、その中で「女性省設立」の提言を行いました。片山さつき先生のご尽力もありまして、その後、私が提案した女性省のアイディアは参院政策審議会において、正式に検討されていています。女性省のアイディアは当初見向きもされなかったのですが、自民党内で正式に検討されるまでになりました。

女性省をつくる目的は、本当の意味で女性の社会進出を実現するという日本の意思を、国内外に示す意味があります。各省でばらばらと実施しております女性への支援策を、女性省で取りまとめて総合的に施策を実施すべきだと思います。諸外国では女性省を作り、ここに権限を集中させて、女性の社会進出を進めています。女性の社会進出について理解の深いカナダ、ドイツ、オーストラリアには女性省があります。また、今後女性の活躍を進めなければならない韓国、タイ、ベトナム、フィリピン、バングラデシュにも女性省が存在します。日本には、内閣府男女共同参画局が存在しますが、これを省へ格上げするイメージです。

 

(2)女性活躍企業からの優先調達

オーストラリアでは“Male Champions of the Change“(MCC)、意訳すると「(女性活躍社会への)変革を担う男性インフルエンサーの会」が2011年に創設されました。メンバーは、ゴールドマン・サックス、マッキンゼーオーストラリア代表、内閣府次官、オーストラリア・ニュージーランド銀行、国防軍参謀総長等など、オーストラリアに強い影響力を持つ男性24人により構成されています。

このMCCでは、議論だけではなく具体的なアクションプランを実行しています。最も分かりやすいアクションは、例えば、「調達目標」を設定したことです。具体的には、取り組みに参加する大企業は、「女性が所有、もしくは経営している会社から年間約300億ドルの調達を行うこと」を目標に掲げ、実際に目標を達成しています。この活動によりまして、大企業だけではなく、大企業の下請けである中小企業の女性管理職比率が向上しました。日本でも経団連が中心になり、このような具体的な活動をしてみてはどうでしょうか。

何故ここまでオーストラリアの民間大企業が、具体的な活動をすすめているのかという理由ですが、この取り組みに参加する大企業の経営者については、その多くが、娘や孫娘がいる男性経営者だと言われています。自分の娘や孫娘のために、女性が活躍できる次世代の国づくりを本気で取り組んでいるわけです。

 

(3)育休期間中の資格取得支援

育休期間中に資格取得の勉強をして資格を取得した女性は、自信を持って会社に復帰し、管理職までキャリアップする確率が高くなります。

育休中に親が勉強をすることは、子どもを育てるための休みという育休の本来の目的から逸れるという批判もありますが、育児から少し離れて自分自身の時間を持つことは、育児中の精神衛生上も好ましいと言われています。

日本の企業は、女性の育休中の資格取得制度を充実して支援していくべきです。

2019年2月10日

コラム 第10回 「キャッシュレス化」

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《経団連審議員会副議長として提案》

コラム 第10回 「キャッシュレス化」

 

日本のキャッシュレス比率は2016年度時点で約20%です。韓国、中国、アメリカのキャッシュレス比率から大きく遅れていることが分かります。

 

日本政府は2020年までにキャッシュレス比率を2倍の40%を目指す方針を立てていますが、まだまだ日本では現金決済が一般的であり、キャッシュレス化が進んでいません。

 

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                               出所:経済産業省

 

私は、日本のキャッシュレス化を一気に進めるために、①2020年東京オリンピック・パラリンピックと、②消費税増税の2つのイベントを最大限に活用すべきだと考えています。

まず、2020年東京オリンピック・パラリンピックにおいて、多くの外国人が来日しますので、外国人がスムーズに決済できるようにキャッシュレス化を進める必要があります。また、消費税増税の際に、政府のプランですとキャッシュレスを導入した中小小売店で消費者が決済をすると、消費者に2%程度が還付される制度が提案されています。これにより、これまでキャッシュレスを導入してこなかった中小小売店舗にも一気に導入が進むことが予想されます。

 

また、私は以前に、国土交通省北陸地方整備局の外部委員を務めていた際に、ETC導入促進に向けたイニシャルコストの補助を提案し、その後ETCが大きく普及をしました。これに習い、政府はクレジットカード決済の端末を中小小売店が導入する際には、一定期間、補助をしてみてはどうかと思います。また、クレジットカード会社は、中小小売店向けには、決済手数料について軽減したプランを用意するべきです。このような官民の双方の努力により、キャッシュレス化を推進すべきだと考えます。

 

まだ日本の地方に行きますと、現金でしか支払いができないタクシーが多くあります。世界では賛否両論ありますが、ウーバー時代になっておりますが、日本のタクシー業界はこれを強く拒否しています。ウーバーを拒否するのであれば、ウーバーに負けないようなサービスの導入を考えて欲しいものです。事業者のエゴではなく、最後は消費者にとって何がベストなサービスかを考え、それを提供することが、企業の発展につながるのではないでしょうか。

2019年2月10日

コラム 第9回 「次世代の人材育成」 PART2

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《経団連審議員会副議長として提案》

コラム 第8回 「次世代の人材育成」PART2

 

私は、次世代の人材育成に求められる基本能力の一つとして、「状況判断能力」と「実行力」を重視しております。強い組織は、例外なく一人ひとりに「状況判断能力」が備わっております。

上司から言われたことをやるのではなく、目標、目的、戦略を理解したうえで、その戦略を実行するために主体的に考えて動く人材が必要です。

あえて分かりやすく表現をすれば「先読みをして行動ができる人材」が求められているのです。受け身ではなく、先読みをして主体的に行動ができる人間が、特に中小企業には必要だと日々感じています。

 

さらにグローバル人材の育成については、早期の段階での幼稚園や保育園からの英語教育やインターナショナルスクールの積極的な誘致、海外学校との交流(海外修学旅行や訪日海外学校との交流)、異文化理解の促進、そして海外留学の促進と補助などが有効かと思っております。

またイノベーションを起こす人材としては、文部科学省が進めるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)を設立し、科学的能力や科学的思考力を培い、国際的な科学技術関係人材をバランスよく育成することが考えられます。

これは私見ですが、日本人は語学面での負い目がなければ、国際的に活躍できる可能性が大いにあると思います。これからの子供たちには、少なくとも海外でビジネスができるレベルの英語を身につけてほしいというのが私の願いです。

2019年2月 5日

コラム 第8回 「次世代の人材育成」 PART1

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《経団連審議員会副議長として提案》

コラム 第8回 「次世代の人材育成」

 

日本企業の環境変化は、グローバル競争の激化と国内の急速な少子高齢化の進展と人口減少等により、国内市場ならびに地域経済が縮小しております。

天然資源に乏しい日本経済が将来にわたって成長を維持するためには、イノベーション力や技術力、そしてグローバルコミュニケーション力を高めた人材の育成と一層の強化が不可欠となっております。日本が明治維新以降、世界に追いつき、追い越してこられた長期的な成功要因は、「米百票」の精神にもとづく人づくりにあったと考えています。過去の経済界における成功者の多くも、最終的には教育に投資をする場合が多くありました。今後の日本にとっても引き続き人づくりが重要であり、地域経済の活性化や多様性のある活力を持った社会・経済づくりの基盤となるものと思われます。

 

日本企業がグローバル競争を勝ち抜いていくためには、従来のような型にはまった効率重視の人材育成ではなく、グローバルに活躍し、イノベーションを起こして新たな価値を創造できる人材育成に舵を取る必要があります。

私は以前から、企業が持続的に成長するためには、社内外で正しい競争力を生み出す戦略が必要だと提案してきました。そして日本の成長と発展も、この競争力の回復が最も大切なのではないのでしょうか。過剰な競争はもってのほかですが、個人を強くするため、組織を強くするためには適度な競争が必要です。

競争して成長していくというのが自然の法則であり、競争力の回復こそが次世代の多様性のあるダイナミズムを引き出す要諦です。グローバル競争の中で勝ち抜くためには、まず個人を強くし、次に組織を強くしなければなりません。近年課題だと感じるのは、人材不足の状況の中で、日本人の労働者の間で競争意識が低下している点があります。社内の中で、同僚に勝ちたい、出世したいと考える社員が減ってきているように思います。

 

「組織は戦略に従う」と言われますが、人材も戦略にそって育成する必要があります。今後は、日本もシンガポールのように海外から優秀な外国人を受け入れて、競争環境を整え、もう一度日本人の競争意識を醸成していく必要があると考えています。

 

また、オープンイノベーションなどの大企業と中小企業(スタートアップ)の連携・協業活動等を積極的に活用して、人材育成を図ることも実践的だと思われます。高度経済成長期に日本の中小企業は、大企業からの高度な要求に対し、真摯にこれに向き合い、不可能を可能にするようなテーマに取り組み、自らを「ストレッチ(伸ばす)」することで成長してきました。大企業と中小企業は連携することでともに成長できるのであり、この関係は将来においても変わりません。現在、私が委員長を務める経団連の地域経済活性化委員会では、上記のような考えから、大企業と中小企業のビジネスマッチングを進めているのです。

2019年1月21日

コラム 第7回 「働き方改革と労働生産性」

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《経団連審議院会副議長として提案》

コラム 第7回 「働き方改革と労働生産性」

 

経団連は夏季フォーラム2018経団連宣言で、働き方改革について「多様な人材がイノベ―ティブに活躍するための働き方改革を加速する」と言う宣言をしました。この働き方改革につきましては、大前提として日本全体の企業で推進すべき課題だと捉えております。また働き方改革を実施する方法やタイミングについては、各企業の判断に委ねられるべきと思います。

 

特に大企業と中小企業に分けた議論が必要と考えております。

中小企業については、すぐに実施できる余裕のある企業とそうでない企業があり、中小企業の事情にも鑑みた政策であるべきです。日本の中小企業の強みとする「手わざ」や「感性」を重視する創造性の高い仕事は、時間の制約を受けずに取り組まなくてはならず、労働時間を短縮しにくい領域もあります。

 

中小企業では社員数は少ないものの、個々の労働者に目を向けると多様な人生設計がありますので、単純に労働時間を短縮するのではなく、ライフステージに適した働き方を労働者が選択できるような制度設計をする必要があります。例えば、労働時間に縛られず成果に応じた報酬を得たい世代については、裁量労働制を選択できるようにします。また、子育てや介護等の家庭の事情がある場合には、フレックスタイム制、短時間正社員制度等を選択し、出退社の時間に自由度を持たせる必要があります。人生のライフステージに応じて働き方を選べるようにする必要があるのです。人材の採用が容易でない地域の中小企業においては、このような多様な働き方ができるような制度設計を行い、育った人材が長く働いていただく職場を整備することが求められます。

 

他国に目を向けると、日本よりも労働時間や労働生産性が上回る国もあります。

例えば、意外ですが、米国は日本に比べ労働時間が長く、労働生産性も高いため世界的な競争力を維持しております。日本全体の事を考えると、労働生産性を上げる前に労働時間を短くしてしまえば、国際的な競争力が落ちるのではないかと危惧しております。このため労働時間の短縮と労働生産性の向上については、同時並行に推し進めて、日本の国際的な競争力が低下しないよう留意する必要があります。

 

労働時間短縮については、労働基準法の改正により残業時間の上限は「月100時間未満」となり、違反した企業には罰則が科されることになります。しかし、中小企業の仕事は中小企業だけでマネジメントできない部分があります。発注元である大企業から急ぎの仕事が入れば、可能な限り対応せざるを得ません。よって、大企業も下請けである中小企業の働き方を見据えて、中小企業の従業員に無理な働き方が生じないような発注をする必要があります。大企業は自社だけでなく、下請けも含めたサプライチェーン全体の働き方を検討すべきであるのです。

 

一方労働生産性の向上については、基本は業務の効率化と改革に向けた継続的な努力が必要になります。日本の企業や行政の働き方を変えていく、生産性を上げていくためには、最終的には権限と責任を最適に配することが重要だと思います。企業においては、コンプライアンスを守りつつ、権限や責任を委譲していくことが生産性に繋がります。そして、この権限と責任を最適化するためには、先ず全社的に業務の棚卸を実施することが必要です。業務が経営資源に見合った効果を上げているかを分析し、効果が見られなければ業務の削減、縮小、方向性の転換(改革)をすることになります。この業務の棚卸により、業務の内容や手順が明確になり、結果として多様な働き方(ダイバーシテイ&インクル―ジョン)や多能工化などが進み、業務を複数の従業員でカバーするジョブローテーションが可能になります。

 

そして最も重要なのは、経営者が先頭に立ってリーダーとしての旗を振り、発信を続けることで社内に意識改革を起こすことです。経営者自身の働き方改革に対する確固たるビジョンと危機意識を社内に対して、継続的に忍耐強く示していく必要があります。

 

今後、日本の企業に求められるのは、ビッグカンパニー(売り上げ)よりもグッドカンパニー(利益率や持続性)という考え方だと思います。民間企業や行政において、適切な権限と責任の分担がなされ、「生産性や利益率」が重視される国、「量より質」が重視される国に変化していく必要があるのではないでしょうか。