2018年2月17日

北國新聞 2018年2月17日掲載

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(北國新聞 2018年2月17日より)

2018年2月 2日

雪かきが教える生きた教訓

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 今年は例年になく大型寒波が日本を襲い、普段は雪の降らない地域にも雪が降りました。

雪に生活を左右される地域の苦労が理解されたのではないでしょうか。

 

 

 新年早々の大雪の日、私は東京にいました。この日の朝は東京は快晴で赤坂見附のマンションから富士山がすっきり最高に美しく見え、感激しました。金沢に戻った次の日、会社へ向かうと、街中に雪が多くて驚きました。道路はどこも渋滞で、路面は凍結したつるつるか凹凸。雪の降らない地域に住んでいれば、こんな苦労に気づかないのです。

 

 私は昔から、雪が降ると、まず社員たちに店の前の除雪をさせました。出入り口付近だけでなく、店の前全体です。通る人がその店をどう見るかに関わってくるからです。その代わり、社員用の駐車場は後回しです。雪の日の街中を歩くと、経営者の姿勢が見て取れます。

 

ただ、雪を理解している北陸の私たちでさえ、新潟の過疎地の2メートルの積雪や、北海道の氷点下20度は想像できません。テレビや新聞の報道を通して知っているだけだからです。自分のことでないと、継続性のない一時的な同情だけで終わることもあります。

 

1月下旬の大雪では、東京でも雪が積もり、大混乱しました。積雪の大変さを体験して初めて雪国の苦労を実感したはず。私は「井の中の蛙大海を知らず」ということわざを思い起こしました。都会では、解ければ水になる雪に悪戦苦闘し、トラブルが続出していました。

 

 雪は生活への影響がありますが、そのおかげで蛇口から直接おいしい水が飲めます。日ごろお付き合いのないご近所と助け合う機会にもなります。いいことと悪いことは表裏一体なのです。体験を通し、メリットとデメリットを感じてこそ、現状からの脱皮やステップアップを図ろうと思えます。

 

 私は以前、股関節の手術をして車椅子生活を送りました。車椅子だと道路が悪かったり、障害物があったりするだけで通れません。病院のトイレでも便器があと3センチ高かったら1人で使用できるのにと、体験して初めて感じました。おかげでそれ以来、車椅子の方を見れば、大丈夫かどうか気にかかるようになりました。

 

 幼い頃、海の水は水平線で落ちるとどこへ行くのか、父に聞いたことがあります。父は私をボートに乗せ、水平線がどこまでも続くと教えてくれました。

 

 地球が丸いと自覚すると、地球儀に関心が出ました。世界の広さを知ると、日本と世界の経済や文化に興味が湧きました。すべては最初の疑問から発展したのです。両親は、いつも体験から物事を教えてくれました。

 

 私の座右の銘は「トンネルを抜ければ景色が変わる」。苦境でも、トンネルを抜ければ脱皮して成長できる。脱皮する虫や動物は、体が大きくなると鎧が小さくなり、脱皮する度に成長を遂げます。体験するほど、人の能力はアップするのです。

 

雪の日は、人の考えや生き方を考えさせられます。協力して雪をどけないと生活ができない。自分一人の勝手は許されない。雪はさまざまなことを教えてくれる生きた教訓なのです。

 

 

(2月2日(金)讀賣新聞 石川版「浅野邦子の金言」より)